スンデといっても日本の人にはまずなじみがない。スンデは韓国ハルサメ、もち米、野菜と香辛料のペーストを豚の腸に詰めて、ゆでて固めた韓国式ソーセージだ。朝鮮半島の北が発祥の食べ物で、アバイスンデという名前のスンデが有名だ。アバイスンデは普通のスンデよりずっと大きく、具もハルサメやもち米などは入れないスタイルといわれている。モンゴル、フランス、イギリス、ドイツ、南米にも同じタイプのソーセージが存在する。これは肉食を主食とする民族の豚肉に対する加工技術の賜物であり、それぞれの厳しい風土における冬場のビタミン・鉄分不足を補う手段の結実でもある。ソウルの屋台で食べたあつあつのスンデはとても歯ごたえがあっておいしかった。しかし日本の韓国居酒屋で食べるスンデはなんだかおいしくない。それは韓国からポッタリ(ハンドキャリー)で空輸しているから鮮度に問題があるのだ。日本で自家製のスンデを作っていて、「韓国で食べたのと同じだっ!」と韓国通をうならせる店が新大久保にある。スンデの味なら日本一、「コリア・スンデチプ」をレポートする。 |
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1.お店とご主人 千ビョンシンさんの略歴
1988年に留学生として来日しました。日本で英語を勉強したら、英語、日本語、韓国語とトリプル・リンガルだなぁと思ったのです。学生をしながら韓国居酒屋でアルバイトをし、8年ほど前に店をもちました。しかし、なにかこうやる気がなかったのか、欲もなかったのか、結局、自分で店を潰してしまったのです。借金も大変だったし、人にも迷惑をかけました。そこで、困っているわたしに母がスンデのレシピを考えてくれたのです。これがなかったら、わたしの再起はなかったといってもいいでしょう。店の名前をコリア・スンデチプにしたのは、英語でコリアという方がワールドワイドなイメージで若い日本の方にも親しみがわくかなと思ったからです。現在は営業5年目です。お客さまは韓国人60%、日本人40%で、そうそう、有名人ではフジテレビの八木亜希子アナウンサーがお忍びでみえました。日本の会社員さんたちの間でクチコミで店の噂が広がっているようで、女性の方だけの来客も増えていますから、そのうち、韓国人と日本人の比率が50%、50%か?逆転するかもしれません。 |
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2. お店の仕入や営業の工夫はどうしていますか?
仕入に関しては韓国産のものはハルサメだけです。あとは全部日本のものです。スンデと豚足は卸で地方発送もやっています。北は北海道、南は沖縄まで送りますが、わたしが気に入った先でないとダメです。つまり、うちのスンデの味のよさがわかる、やる気のある、信用できるお店を選んで卸しています。新大久保界隈では韓国食堂「梁の家」の主人がわたしと同じ木浦出身で先輩後輩の仁義ある間柄なので(笑)そこには卸してあげています。店ではやはりスンデが一番人気がありますが、二番目の人気メニューに王豚足セットというのがあります。キムチが3種類、ナムルが3種類、豆腐のジョン(焼き物)と真露焼酎がついて3,500円です。この値段は原価ギリギリです。なぜこんな値段でだすのか?というと、豚足と副食を食べて焼酎を飲めばもっと酒がすすみます。ですから、のちほど追加ででる酒代をもうけとして期待しているのです。他にはスンデのフランチャイズ化を将来の課題と考えて、会津喜多方ラーメンチェーン業界の方から指導をうけ、そのノウハウを勉強中です。 |
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3.味へのこだわりはありますか?
スンデの仕込みは毎朝10:30から、2時間程度かかります。材料を練って、腸詰するのは力仕事が多いので、わたしをいれて男性2名で、ゆでて乾かす係りの女性1名と3人でやっています。スンデ作りはベテランのスタッフだけで作業しています。機械工程で作った腸詰もありますが、金属が必要以上に食材にふれると味が落ちますし、気候、気温にあわせた素材の調理、詰め具合、ゆで具合もありますので、うちは全部手作業でやっています。味は韓国で食べるスンデとまったく同じ味だと自信があります。 |
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4. マスターより一言
あの店にいかないと「あれは食べられない、あの味はない」といったオリジナリティーのあるものを1つだけ、探して極めることが、お店の息の長さだと思います。うちが力をいれているのは1番はスンデです。それをある程度納得いくレベルまで極められたので2番手として豚足も始めました。しかし、他にこれ以上メニューを増やすつもりはありません。これだけで、これからもずっとやっていきます。変わることのない韓国の味をお客様にいつでもおだししています。ぜひ食べにきてください。
現在、金、土、日曜と来客数が多く、1日150人という来客の日もあったそうだ。 時間帯は午後7時から9時までがピークで、全部のお客様に対応できず、あえなく断
るような状態も続いている。もうしわけないので、昨年にはコリア・スンデチプは大 改装をおこない店のスペースを2倍にした。韓国の本物のスンデの味が恋しい人には
いってほしいお店だ。 |
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5.試してみたいメニューレシピ
スンデのレシピはご主人のお母様の考案された門外不出のオリジナルレシピのため、質疑応答がある程度制限されましたが、そこは取材者の意地もあり、教えてくれないものは盗んでも、という気持ちで見学させていただきました。
コリア・スンデチプの至極の「スンデ」(2〜3人前:1,000円)
材料:
ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、生姜、韓国ハルサメ、もち米、塩、でんぷん粉、サラダ油、半練りタイプの白色調味料(秘密)、豚の腸、豚の血
レシピ:
豚の腸はシンクに薄い塩水をためてそこにつけておきます。韓国ハルサメに熱湯をかけて半分ふやかします。ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニク、生姜はミキサーにかけてドロドロにしておきます。大きな“たらい”にこれらの野菜、蒸したもち米、豚の血をいれて手でよくまぜます。次に塩、でんぷん粉、サラダ油、半練りタイプの調味料をいれよくこねます。秘密の半練りタイプの白色調味料に関しては中華食材でよく使われる肉、野菜エキスにアミノ酸系調味料をいれて小麦粉、砂糖、塩、香辛料、動植物油脂で練込んだものだと推測されます。最後にふやかしたハルサメをいれ、植木バサミのような巨大ハサミをつかってハルサメを“たらい”のなかで時間をかけて細かく切ります。黒紫色に練りあげられたこれらのペーストを豚の腸につめていきます。漏斗の大きなものを豚の腸にさしこみ、漏斗から黒紫色のペーストをすりこぎ棒の上下を平らに切り落としたもので押出しながらひとつひとつ、手作業で詰めていきます。詰めるのには熟練した技術と勘が必要で、押込むときにはいった空気を手で調節したり、途中腸が破れているところは、うまくペーストを移動させて、腸詰が1本とれるところを短い2本にしてとったりします。腸詰はゆでると1.5〜2倍に膨らみますので、破裂しないように、腸の左右の端は結ばず、また先端までつめないで左右15cm程度の部分を残しておきます。ゆで時間は約30分。途中1回だけさし水をし、ゆであがったらザルにとり、10分ほどさましてから、左右の端をハサミで切り落とし、竹製の大ザルに1本1本、かさならないよう、ループさせながらザルのふちに掛けるようにして置き、冷風の下で乾かします。スンデはゆであがって間もないころは、まるで白い大ミミズのようですが、冷風で乾かしていくうちにあざやかな赤紫色に変化します。お客様にお出しするときは、スンデを改めて蒸し、ゆでレバー、ゆでガツ(豚の胃の部分)といっしょにスライスして盛り付けます。これらを塩とコチュカルをまぜた味塩につけて、あついうちに食べます。ご主人より、細かい分量は秘密と何度もいわれましたが、取材にうかがった日は、ポリバケツ1杯分の韓国ハルサメ、もち米16〜18合、半練りタイプの白色調味2/3斗缶、ボール1杯分の塩、ボール1杯分のでんぷ
ん粉が使われていて、スンデは大鍋3つ、たっぷりのお湯でゆでていました。 |