11月12日の全国ロードショーに先駆けてイ・ヨンエ主演映画『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督が来日し、都内で記者会見が行われました。今作品は、ソン・ガンホ、シン・ハギュンを主演に迎えた『復讐者に憐れみを』、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した『オールド・ボーイ』に続く“復讐三部作”の最終編!記者からはパク・チャヌク監督に対して復讐とは何か?というするどい質問も殺到しました。
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まず、ご挨拶をお願いします。
この『親切なクムジャさん』は、日本でイ・ヨンエさんの人気が高まっている中で公開できるということを非常に幸いなことだと思います。またイ・ヨンエさんという韓国で立派な女優の新作を手がけることができて非常に嬉しく思っています。
『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』と製作してきましたが、前作2作品との違いは?
まず1作目の『復讐者に憐れみを』は、非常に政治的内容を含んでいます。韓国社会、あるいは資本主義社会が抱えている階級をめぐる葛藤を描いた作品でした。『オールド・ボーイ』では、政治的な側面はまったくなく、神話的な内容になっています。この中には人間の根底にある欲望が描かれているといえます。そしてこの『親切なクムジャさん』の場合は女性が主人公という作品ですので当然のことながら前の2作品とは異なってきます。女性だけに暴力描写は非常に優雅です。この映画における暴力というのはとても崇高で高尚な目的のために使われています。この怒りと暴力の世界を超えて主人公はより高い次元を目指しています。つまり贖罪と救いの道を求めています。
簡単に説明しますと、1作目の『復讐者に憐れみを』は、ソン・ガンホさん、2作目の『オールド・ボーイ』はチェ・ミンシクさん、そしてこの『親切なクムジャさん』はイ・ヨンエさんのための映画だといえます。私は立派な俳優さんたちの魅力を発見して、交流をしながらお互い学びあって作業していくのが監督としてのやりがいを感じました。今回はこの3人の俳優の力を引き出すことにエネルギーを注いで努力しました。
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ヒロインのイ・ヨンエさんの魅力とは?
イ・ヨンエさんは韓国ですべての女優のなかででも完璧な美しさを持っている女性です。これまで多くの作品を手がけてきた照明スタッフやメイクさんに話を聞いても彼女の顔を見るたびに感嘆してしまうそうです。やはりルックスの美しさというのは大切だと思います。
しかしながらイ・ヨンエさんはそれ以上のものも持っているように思います。彼女は撮影のときに本当にいろいろな表現方法を持って現場で提案してくれます。こちらとしてもイ・ヨンエさんという個性を誇張して映画のなかに取り入れるわけではなくて、完全にその映画のキャラクターに同化させるよう演じてもらっています。もうひとつ彼女の魅力はその美しさを誇示しないところだと思います。
日本の韓流ブームが続いている理由は何だと思いますか?
この答えは非常に難しいですね。私は韓国人なのですが、韓国のドラマをまったく見たことがないんです。またドラマどころかテレビもまったく見ていないんです。ですので、おそらくなのですが、韓国のドラマは感情表現が強烈で大きく表れているので支持されたのではないでしょうか?それを演技で上手に表現できる俳優もいるのでそういう点が日本の皆さんの心に響いてきたのかも知れませんね。でも考えてみると日本の韓流ブームの代表のペ・ヨンジュンさんはそれほど感情表現が激しくはないと聞いているので、私の解釈は適切な答えじゃなかったのかも知れませんね。
クムジャさんは無罪の人ですが、あえて“無罪の人間”を描きたかったのですか?
クムジャさんが他人に復讐をする動機というのは、他の復讐劇とは違ってくると思います。彼女の動機というのは非常に弱いものなんです。彼女に関わる人物がだれか直接死んでいるわけでもないし、娘が奪われたときも再会できたので、他の復讐劇の映画と違うのではと思います。
まさにこの点こそがこの作品を作るか作るまいか考えたときに非常に勇気を与えてくれました。あえてこの復讐には弱い動機を設定していますが、なぜそうしたかというとクムジャは罪の意識には非常に敏感な人間だということを表現したかったからです。クムジャが行っている復讐というのは怒りを解消したいからではなく、あくまでも“贖罪”の意味における復讐になるのではと思います。その点においては数ある復讐劇のなかでも差別化されるものだと思います。
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雪のシーンが印象的でしたが?何か意味がありますか?
フェリーニ監督の『アマルコルド』に雪が出てくるので比べる人がいますが、まったくこの作品を作ることに影響を与えませんでした。逆に別の作品で「マネしているのでは?」と思われてしまう作品に出会ったんです。実はこの『親切なクムジャさん』の最後のシーンを撮りにオーストラリアに行ったとき、撮影の合間にたまたまDVDショップに入ったら“タランティーノの『キルビル』に影響を与えた作品”として日本の映画『修羅雪姫』が紹介されたんです。気になってみてみると、まさにこの『親切なクムジャさん』そっくりで、雪が降っており女性を主人公とした復讐劇だったので「これは大変だ」と思いました。日本の人が見たときにきっとこの映画のマネをしたのでは?と思われるのではないかと思って…。 雪のシーンを印象的にしたのは、ただひとつ、“贖罪”の意味を込めたいと思いました。雪というのは白い色なので白い色のように浄化されたいという欲望の象徴として雪を表現しました。
“復讐の権威”とも言える監督ですが(会場笑い)個人的にトラウマはありますか?
誰でも生きていれば大なり小なり心の傷は負うものです。私の場合、小さな侮辱があって怒ることは怒るのですが、それを他人には向けないし他人を怒ったことなどありません。私の心の中にしまっているのですが、ただそれが溜まってしまって寝る前に考えたりすることもあります。どうしてあの時なじったり殴ったりしなかっただろうと、考えれば考えるほど大きくなってしまってどう復讐しようかと思ってしまうことがあります。
例えばこんなことがありました。本当に忙しいときに取材があって、インタビュアーが「監督の作品は傑作ですね」と言っておきながら、いざその映画評をみてみると「パク監督はひどいものを作った」とひどく批難してあったのです。そんな時は「いかにしてこいつをいじめてやろうかとか、復讐するにはどうしたらいいか」と考えることがありましたね。(会場笑い)
頭の中で想像することは非常に肯定的な役割を果たしていて精神衛生上良いことだと思います。確かに想像の中で考えてみると非常に病的で残忍だったりしますが、それが想像だけで終わってしまえばまったく残忍ではないと思います。むしろそれは自然なことで、ただしそれを実行に移すのを遅らせるということに心の安らぎを見出せるのではないかと思います。復讐というのは非常に恐ろしい想像ができますが、あくまでも想像の世界に留めておいて、それを死ぬときまで遅らせておく…墓場まで持っていくのがベストではないかと思います。ですから皆さんももし残忍な想像をするときには、ぜひ私の作品を役立てていただけたらと思います。
(会場笑い)
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なんと、写真撮影では映画の冒頭に印象を与えた小道具の“豆腐”を持って登場した監督。「心を白くして…」というメッセージが込められています。監督が語る“復讐”の世界にどんどんハマってしまう…そんな記者会見でした。ぜひこの復讐三部作をこの目で見届けたいですね。
『親切なクムジャさん』 11月12日(土)より全国ロードショー |