
2004年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品“審査員長タランティーノも絶賛した韓国映画<オールド・ボーイ>”監督パク・チャヌク来日記者会見
この度<オールド・ボーイ>が秋から日本で全国拡大ロードショー上映される事が決まった。パク・チャヌク監督作品<JSA(2000年)>は日本でお馴染みの<シュリ>の観客動員数を塗り替える大ヒットとなり、その後<復讐者に憐れみを(2002年)>は“娘を誘拐された父親の復讐劇”を描いた為、賛否両論があったものの映画評論家からは高い評価を得ました。
記者会見では、オールド・ボーイ撮影過程の裏話がたくさん出て、全体のストーリー構成を考えてから脚本を作らないという“型にはまらない作家性と娯楽性を兼ね備えたパク・チャヌク監督の人柄”を十分感じ取れる時間となりました。
会場に来ている皆さんに一言お願いします。
監督:このように関心を持っていただいてありがとうございました。<JSA>以降、日本で上映される私の二つめの作品となります。<オールド・ボーイ>の撮影は韓国で行い、雪原のロケーションのみニュージーランドで行いました。<復讐者に憐れみを>は、オムニバス形式で作りました。日本の三池監督も一緒に作った<Emerging
Masters>こちらの方も上映される予定です。
最近、韓国の文化に対して日本の人々の関心が非常に高いと聞いており、今回この<オールド・ボーイ>の封切りをきっかけといたしまして、日本の女性の皆さんに“韓国はペ・ヨンジュンさん以外にもチェ・ミンシクさんとかユ・ジテさんのような、すばらしくかっこいい男性がいるという事”を知っていただきたいです。
日本に来て、どこか観光しましたか?
監督:10回ぐらい日本に来ていると思いますけれども、いつも仕事の関係で来ていますので、東京以外のところに行った事はありません。おととしは東京映画祭の時に審査員として来ました。このように暑い時期に来るのは、はじめての事で昨日は特に暑くて苦労しましたが、今日は風が吹いているのでだいぶ過ごしやすいです。この会場に来る前に映画のポスターを売っているお店に立ち寄ったのですが、そちらで私の大好きな黒澤明監督の昔の古い<天国と地獄>というポスターを購入しました。それで今はとても気分がいいです。
この<オールド・ボーイ>という映画は日本のコミックが原作(原作:土屋ガロン/画:嶺岸信明)となっていますが、このコミックを読まれたきっかけは?
また、映画になるまでの経緯を聞かせて下さい。
監督:この映画を作る事になる1年程前に、ポン・ジュノ監督(殺人の追憶)
が「実はこういう漫画があって非常におもしろいからぜひ読んで下さい」と言って私に勧めて下さいました。ですが、その作品をなかなか入手する事が出来ずに、ずっと読めない状態でいました。ところが、この作品とはこの映画のプロデューサーが私のところに漫画を持ってきて、この漫画を映画化して欲しいと依頼をしてきた事により出会うことになりました。それで、運命的なものを感じました。この二人の主人公が精神的な、社会的な障害・災害にあっているという事や、孤独な二人の男性が壮絶な戦いをする中で、その点においてお互いが相手に対して愛情を持つようになる、そういった設定に感じました。<オールド・ボーイ>の原作者の方とは考え方とかが自分に非常に似ていると思いました。
この<オールド・ボーイ>ですが、映画に出ていらっしゃるゲストがチェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・へジョンと魅力的な俳優ばかりですね。彼らに対しての印象をお聞かせ下さい。
監督:チェ・ミンシクさんとは以前から一緒に仕事をしたいなあと思っていましたので、やらないかと言うまでもなくチェ・ミンシクさんしかいないと最初から結論を下していました。ちょうどそんな頃、このプロデューサーがチェ・ミンシクさんに決まったと嘘をつきました。チェ・ミンシクさんも私も、お互いを知らないままにこのプロデューサーに騙されて契約書にサインをしたのです。次にキャスティングされたのがカン・へジョンさんなのですが、私は韓国の人達にあまり知られていない人を起用したいと思っていましたので、公開オーディションを行いました。そのオーディションにどれ程の人達が参加したかは、はっきりした数字は覚えてないのですが、数百人という若い女優が集まっていて、その中でもカン・へジョンさんが特に際立っていたので、審査員(チェ・ミンシク、パク・チャヌク監督等)4人が彼女を選ぶ事を決めました。
次にユ・ジテさんのキャスティングをするには、ものすごく時間がかかりました。チェ・ミンシクさんと一緒に共演していて、彼におされる事のない演技力を備えたスターの中からキャスティングをしようと思っていましたが、映画をみていただくとわかりますがチェ・ミンシクさんと違ってイ・ウジン役というのは登場する時間が非常に短いですし、また「チェ・ミンシクさんと一緒に共演して良い事なんか何もない」と言って、なかなか手を挙げてくれる人もいず、非常に厳しいものがありました。イ・ウジン役にユ・ジテさんを起用したらどうか?と提案したのはチェ・ミンシクさんでした。実際、私はユ・ジテさんとは親しい仲でしたが、彼の年齢が非常に若かったので、彼をキャスティングしようという考えは全くありませんでした。
映画の設定上、オ・デスとイ・ウジンの年齢差が2、3歳ぐらいです。イ・ウジンという役ですが、彼の姉の死によって成長自体が止まってしまった少年です。そこで考えてみた結果、そんなに実際の年齢差は関係ないと思い一種の発想の転換をする事にしました。考えがまとまり、すぐにユ・ジテさんに脚本を送ったところ、その日の内にユ・ジテさんからわかったという返事がすぐ来ました。私がこの脚本を書きはじめた当初からチェ・ミンシクさんは自分がイ・ウジン役をやると駄々をこねていました。ですから、もしかしたらユ・ジテさんがイ・ウジン役をやると言わなかったら、彼がやっていたでしょう。しかし、ユ・ジテさんがやる事に決まり、そのような悲劇は免れる事になりました。この映画を見た人達が一番魅力を感じるのは、このイ・ウジン役とわかっているのでチェ・ミンシクさんはやりたがったのでしょう。
撮影期間中のエピソードは?
監督:最後のクライマックスのシーンはイ・ウジンのすみかであるテントハウスで行われましたが、そのテントハウスの中で全ての秘密を知る事になるシーン、そういう時に限ってNGが多く出て、時間に追われていました。セットを全部壊して、あけ渡しをしなければならないというのにNGが出て何回も何回も取り直し、最後の数日間というのは眠れない状態で撮影を続けていました。チェ・ミンシクさんは非常にエネルギーを必要とする演技をたくさんしていらっしゃいますので、数回撮ってしまうと完全に力が抜け、疲れ果ててしまいテントの隅っこで眠りに落ちてしまう状態でした。ですから私達は俳優達が寝ている間に次のスタンバイをして、スタンバイが出来たら彼らを起こして演技を撮ると繰り返していました。完全に眠りに落ちた彼らを起こして、こんなにも朦朧とした状態でちゃんと演技が出来るのかな?と心配しましたが、彼らはさすがに俳優で、カメラを向けられると目を大きく見開いて声を大きく出し、非常に情熱的な演技をして下さいました。そういった彼らの姿をみて感動しました。次にもう一つ浮かんだ事がありますが、チェ・ミンシクさんとカン・へジョンさんのベッドシーンで日本ではよく判りませんけれども、韓国では女優さんが洋服を脱いで演技をするシーンという場面では、必要最低限のスタッフ(監督や衣装を担当するスタッフのみ)を残し、他のスタッフをみんな外に出して撮影します。彼女が初めてのベッドシーンという事で非常に緊張していたので、衣装を担当しているスタッフにカン・へジョンさんにはすぐに毛布をかけてあげるように、準備しておくようにという支持を出してはじめました。でも、いざ撮影がはじまってみるとチェ・ミンシクさんが非常にうまくリードして下さいましたし、非常に撮影現場の雰囲気が良かったので彼女はすぐに慣れてしまいまして、パッパと服を脱いでしまい担当者が毛布をかけようとしても「暑いからいらないわ、早くやりましょうよ!」と言われてしまって、逆に撮影している私達やチェ・ミンシクさんの方が逆に戸惑ってしまっているから「僕達に毛布をかけてくれよ!」と冗談を言っていました。
監督の気に入っているシーンは?
監督:私は以前から映画の導入部分をただ状況説明ですとか、人物紹介をだらだらするのではなく、ドラマティックなシーンからはじまるそういう映画を作ってみたかったのです。この映画を通じてそれが出来る事となりました。それから、チェ・ミンシクさんとカン・へジョンのベットシーン、ラブシーンの導入部にマスクをつけた男が入ってくる台詞のないシーンなどが気に入っています。
もし、監督が15年間監禁されるとしたら?
15年間監禁されていたオ・デスが釈放されて、ミド(カン・へジョン)の働いているレストランに入りますね。そうしたら、その場所にイ・ウジンから電話がかかってきて、その電話の相手方に対して「オ・デスだ○○なのか?○○なのか?」と自分が15年間この人じゃないかと思い返す人の名前を聞くシーンがあります。実は、そこに出てくる名前というのは、今まで、私の助監督をして下さった方達の実際の名前です。私は今まで一緒に仕事をしてきながら、助監督やスタッフ達を傷つけたりした事があるのではないかと思い、そういった思いから彼らの名前を使ったのですけれども、万一、私がこのように拉致監禁される事があるとすれば、たぶん、そちらの方面からあるのではないかと思います。
前作に続いて復讐というテーマを取り上げられて両方拝見しながら監督の“社会に対する怒り”のようなもの を感じました。現代の社会への監督のお考えが映画にはどのように反映されているのでしょうか?
監督:私は以前から占いというものを信じていなくて、占いをみてまわる人達がいると、なんてばかばかしいのだろうと思っていましたが、ある日、私が占術者に生年月日をみてもらうと私の運命は「正義の為に戦争を起こすか、そうでなければ復讐に執着する人間だ」と言われました。それから、占いを信じるようになりました。世の中の多くの関係をみてみますと“暴力的な要素”が介入している事が非常に多いなあと思います。世の中や人々を動かしているものは、暴力的なものだと感じる事があるので、それで私はこのような暴力的なシーンをよく撮っているのです。けれども、私がその暴力的なものを好きだという事ではなく、それが私の世の中に対する見方だからです。
ハリウッドリメイクする場合の希望のキャスティングを教えて下さい。
監督:チェ・ミンシクさんとユ・ジテさんで意見を共にした事があるのですがもし<オールド・ボーイ>をハリウッドでリメイクするとすれば、オ・デス役にはショーン・ペンさん、イ・ウジン役にはエドワード・ノートンさんがいいのではないかとそういった話をした事があり、そのような想像してみると非常におもしろい映画が出来るのではないかと思います。ハリウッド進出ですけれども、具体的にそれらしい脚本が提供されれば出来ると思います。韓国で撮る事が出来ないような映画がいいと思います。韓国で撮れる映画であるならわざわざハリウッドで撮る必要はありませんからね。私はハリウッドの方に西部劇ですとか、非常に規模の大きいまじめなテーマのSFなどならいいのではないかと話をした事があります。
2004年9月15日(水)
渋谷セルリアンタワー東京ホテル39F ルナールにて
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