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映画監督インタビュー
2003年11月4日、東京国際映画祭・協賛企画『コリアン・シネマ・ウィーク』で「家門の栄光」(出演:チョン・ジュノキム・ジョンウン)が上映されました。これに伴いチョン・フンスン監督が来日。K-PLAZA.com単独インタビューを都内で行いました。
チョン・フンスン監督:1960年生まれ、懸賞手配(1997)、家門の栄光(2002)、極道の妻2 帰ってきた伝説(2003)
チョン・フンスン監督の写真-本作品では、監督ご自身が脚本も共同で手掛けていらっしゃいますが、この突拍子もないストーリーの発想はどこから得られたんですか?

偶然、頭に浮かんだんですよ。まず、見知らぬ男女が朝起きたら同じベッドの中にいる。二人は全く記憶がないわけです。どうしてここにいるんだろう?…ってそこから発想していって、じゃあ、その二人の人物像はどういったものにしようか、って考えた時に、一般的にいって全く異なる背景を持つ男女、ということにしようと。かたや超名門大学法学部出のエリート。じゃあ、それと全く釣り合わない条件の女性はどんなんだ?ってね。で、女性のほうは自分の家、家門というものに強いこだわりのある一族の一員ということにしよう、と思い立ったんです。血の繋がりとか兄弟の結束の固さって言ったらヤクザですね。あと、‘学閥’というものに対比させた‘金、物質主義’という意味でもヤクザの家の娘っていうのが浮かんだんです。最初から緻密にストーリーを練り上げた結果出来上がったものというよりは、まず小さなエピソードから波及させていって色んなインスピレーションを経て出来上がったものですね。

-映画の冒頭のシーンにも出てきますが、チョン・ジュノ扮する主人公の部屋に綺麗な星座がディスプレーされて いますよね。本作はドタバタコメディーを呈する中にもこのようなロマンチックな味付けがいくつもなされていると感じましたが、このディスプレーは監督ご自身のアイディアですか?

ええ、美術担当者と相談しながらね。この星座はスコルピオン(さそり座)なんですが、これは僕の星座なんですよ。こんなところでちょっと遊んでみました。

-これまでも「チング〜友よ」や「新羅の月夜」など方言が劇中で魅力的に扱われている映画はいくつかヒットしましたが、今回の「家門の栄光」は‘方言’をもって観客を笑わせる最初の作品だと言えると思うのですが?

その通りです。「チング」や「新羅の月夜」はキョンサンド(慶尚道)の方言でしたが、「家門の栄光」はチョンラド(全羅道)の方言です。それぞれに特徴があるでしょう?今回の上映でひとつ残念だったのは、この方言が持つ独特の面白さ、語感といったものを日本の観客に伝え切れなかったことです。字幕翻訳上、そこまで表現できなかったようなのでね。

-日本でも方言はたくさんあって、その言葉が持つ可笑しさとか親しみやすさがあります。日本の観客に方言が持つ面白さをそのまま伝えたかったということであれば、例えば字幕を東北弁や関西弁で出してしまってもよかったですか?

もちろん。かえってそうして欲しかった。この映画はズーズー弁をあからさまに喋るヤクザの親子、という設定が観客を笑わせる一つの大きな要素になっているんです。だから、字幕を日本の方言そのままで出してもらったほうが日本の人をもっと笑わせることができたかもしれない。

-本作を拝見してふと感じたのは、映像に、漫画を読んでいるような面白さがあるんです。コマ割の仕方など。 画面上にヤクザの兄貴が突然わっと映し出される場面がありますよね、ああいった所です。もしかしたら 監督は漫画がお好きなんじゃないですか? 漫画からコメディ映画のインスピレーションを得るとか?

うん、インスピレーションとまでは言わないけど、漫画は好きだし、アニメーションも大好きだからね。何よりも僕自身が漫画チックな人間なんですよ。深刻に考え込むと言うよりは、いつも笑えることを考えていて、物事をおおらかに達観して見る、というようなね。そういった面が映像にも反映されているのかもしれないな。

-映画を拝見して思ったのは、音楽がとても効果的に使われているなぁということです。導入部もそうですが、このシーンであの音を使うというのは撮影前に決められているんですか?

いや、撮影前に頭の中で音楽を決めてしまうということはないですね。大体、全部撮り終わって編集の時点でスタッフとの話の中で決めていくんですよ。撮影前に決めてしまうと、そのイメージが頭の中で固定されてしまうからね。うまいことインスピレーションが湧く、ということが起き難い。僕の場合は、撮影時に浮かんだ色んなアイデアで作品がどんどん良いものに変化していくということが多いから、そういう余地は出来るだけ残しておきたいんです。

-監督ご自身が特に思い入れを持って撮られたのはどのシーンですか?

一番初めのカット、観客を引き付ける重要なシーンだね。あとは、キム・ジョンウン扮するヒロインが歌を口ずさむシーン、そして主人公の二人が田舎に行く途中の汽車の中でゆで卵をほお張るシーン、両家の両親が顔を合わせるシーン。

-そうそう、汽車の中でチョン・ジュノ扮するエリート青年が、本当に美味しそうにゆで卵を次々とほお張るシーンはとっても印象的でした。顔立ちの整った彼がほくほく顔で食べるんですよね。でもあれはどうしてゆで卵なんですか?
 
あれは単に、僕の若い頃の思い出です。今の若い人にはゆで卵なんてそんなに魅力のある食べ物じゃないからあんなに喜んで食べないだろうけど、僕の幼い頃は遠足なんかで汽車に乗ったら必ず‘ゆで卵’だったんですよ。本当に美味しかったなぁ。

-俳優をキャスティングされた際には監督の意向が重視されたんですか? 本作の主役にチョン・ジュノ氏とキム・ ジョンウン氏を選んだ理由は?

チョン・ジュノ氏は、それまでは重みのある役柄が多い典型的な二枚目俳優だった。その彼を敢えてコミカルな役柄に起用するというのは映画のひとつの見せ所だし、彼にとっても演技の幅広さをアピールできる良い機会となったんじゃないかな。キム・ジョンウン氏は昔からCMモデルとして売れっ子だったでしょう。CMの中でもコメディセンスを発揮していたから、笑わせる役柄にはうってつけの女優だったんだ。以前からずっと一緒に仕事をしたかった女優さんですね。

-本作には主役の二人以外にも魅力的で個性的な脇役が大勢出てきますよね。

うん、僕の作品にはいつも個性的な連中がごった返してるんだ。そこが特徴だね。そういうふうに作っているんですよ。男と女が出てきて、その二人が燦然と輝いていて、あとの役柄はその二人を引き立てる脇役というんじゃなくてね、出てくる人物それぞれが違った魅力を持って作品を輝かせてくれる、そういう作品になるように心を配っています。今回の作品もヤクザはヤクザだけど、観客に親しみを持ってもらえる、感情移入してもらえるヤクザを描きたかったんです。一家の中でたった一人の娘である妹を皆が本当に深い愛情をもって守っているでしょう。画面いっぱいに強面のヤクザが出てくるけれど、殺伐としてなくてユーモラスな温かい雰囲気を出したかったんです。

-監督はこれまで三作の映画を撮られていますが、一貫してコメディやアクションといった娯楽ものを撮られていますよね? これからもその傾向は変わりませんか?

ええ、何と言っても僕はコメディが大好きなんですよ。三作目の「極道の妻2 帰って来た伝説」も見かけはアクションだけど、コメディの要素が強い。さっきも言ったように、僕自身がコメディタッチの人間だからね。ついそうなっちゃうんだ。しかし、単に観客にバカ笑いをさせる作品というんじゃなく、笑った後に胸が温かくなるような、人間臭いドラマを土台にした喜劇が理想。これからはもっとそういう作品を作って行きたい。

-「家門の栄光」は韓国でも大変話題になり、興行収入も良かったと聞いていますが、何作も作品を撮っているうちに、時には‘ヒットする作品’と‘自分の作りたい作品’に溝が出来てしまうこともあるかと思いますが。

それは毎回そうですよ。「家門の栄光」だってそうです。映画の中で、ヤクザの親子が碁盤を前にして碁石を指ではじいて勝負するシーンがあるでしょう。あれは当時韓国のバラエティー番組の中で大人気になっていたゲームなんですが、僕は始めはあんなものを劇中で使いたくなかったんです。テレビで話題になってるものをそのまま真似するなんて気が進まなかった。それを撮影中にスタッフがこれを取り入れたら観客受けするだろうし、面白いってね。まぁ、だけど結果として親子が幼稚にも本気になってああいったゲームに興じている姿を入れたことで、仲睦まじい親子関係が上手く表現できたんじゃないかと思い直しましたけど。

-この作品を拝見する前にストーリー紹介を読んだのですが、その時は学閥偏重の社会を皮肉ったコメディなのかなと感じました。でも実際に拝見すると、そういった小難しい技よりも笑わせる‘技’が随所に効いていて、単純に観客を楽しませようという一貫した姿勢が見えたのですが。

そうですね、初めにストーリーを考えた段階では、そういった社会構造を皮肉る意味をもっと持たせようとしていました。それが、実際に現場で撮影をしていくうちにそういった要素はどんどん小さくなっていって、どうすれば観客を笑わせられるかということに視点が移っていったんです。それが今考えるともったいなかった点だね。もっと社会を皮肉る要素も入れればよかった。

-今回、監督の作品が初めて日本で紹介されることになったわけですね。

ええ、韓国と日本は距離的にとても近いのに、情緒的には意外と異なる点が多いと感じます。今回の作品もさっき述べた方言の面白さが伝えきれていなかった点もあるし、‘家門の栄光’にあそこまでこだわる韓国社会の背景とか、日本の人にうまく伝わるかなぁといった疑問は残りますね。

-これからの作品で特に使ってみたい俳優は誰でしょうか。

う〜ん、たくさんいすぎて答えるのが難しい(笑)。まぁ、今挙げるとすれば、チャ・スンウォンソル・ギョング…一つの特徴を言えば、自分の位置というか存在を常に探しているような、そんな俳優を使いたい。完成されてしまったスターというよりもね。女優ではキム・ジョンウンとは是非また仕事をしたいと思っている。僕は、まさに雲の上のスターという光り輝かんばかりの俳優にはあまり興味が無い。どちらかと言うと、僕らの隣にいるような、観客が親近感を持てる素材がいいんだ。僕の撮る作品の内容がそういったものだから。

-監督ご自身についてちょっとお伺いしたいのですが、どうして映画監督の道に入られたのですか?

まず、小さい頃から映画が大好きだったということがありますね。日に4回も観ていたこともあるんですよ。真っ暗な劇場に入っていくと、目の前には大きなスクリーンが広がっていて。もう夢中で、映画館に入り浸りの状態だった。それで、まぁ、大人になって映画制作を専攻にしたってことが直接のとっかかりになったわけだけど、まず何はともあれ映画好きだったってことが大きいですね。

-相当沢山の映画を観られているようですね。これまで観た映画の中でベスト1を選ぶとしたら?

そんなの無理(笑)。愚問じゃない?一つになんか選べないよ。

-では、友人にこれは絶対観てみろ!と強力にオススメしたい一本は?

う〜ん、それも結局同じ質問のような気がするけど…(笑)、(しぶしぶと)小さい頃大好きで何回も見たのは「ローマの休日」、オードリー・ヘップバーンの出たあれですね。これはテレビでも観たし、スクリーンでももちろん何度も見ましたね。あとは西部劇。クリント・イーストウッドとかね。「ワイルドバンチ」なんかのアクションも大好きだった。ブルース・リーも大好き。助監督時代にはもう片っ端から観たけど、好きなのはブライアン・デ・パルマだね。

-最後に、監督の映画作りに対する信念、映画を撮るときに常に心に置いている信念があったらお聞かせ下さい。

僕はさっきも言ったけど、コメディ映画をこれからも撮って行きたいと思っている。でもいつも心に留めているのは、観客を笑わせるためにどんなに手を尽くそうとも、ここからはやってはいけない、という線があると思うんだ。それを逸脱してはダメだと思っている。その線っていうのは、韓国語で(ヌキミ マンガジョッタ)っていう表現があるんだけど、これ以上やったら作品自体をダメにしてしまうという一線のこと。それを常に守ろうと心に決めている。

本日はお忙しい中お時間を割いて下さり、ありがとうございました。

インタビュー日時:2003年11月5日(水)
聞き手:Kスタッフ


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