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りょうこのサイパンお気楽生活記
Vol.8 サイパンのランドリー事情

先日、ここ−サイパンで10年来の付き合いがある、韓国人のご夫婦がレストランを始めた。何よりも釣りが大好きなだんなさんの趣味が高じて、刺身とメウンタン(韓国式の魚なべ)の専門店だ。ダンナさんは私より年上だが、うちのオットよりは年下なので私の事を昔から「ヒョンス」と呼ぶ。
これはホントに気に入らないのだが、ブーブー文句を言うのは私だけで、当の「アジョシ」は何が何でも「ヒョンの奥さんなんだからヒョンスと呼ぶのはあったりまえ〜。」と相手にもしてくれない。実は私とオットは10歳の年の差があるので、家族ぐるみの付き合いをしている韓国人の男性のほとんど(いや、考えてみたら全員だな)が私の事をヒョンスと呼ぶ。全く損してる気分だ。

結婚当初、私から見てオッパどころか、アジョシという方がぴったりの男性方からヒョンスニムと呼ばれた時には「ヒェ〜、勘弁してくれ〜。」と思ったものだが、今では「ヒョンス〜」と呼ばれると「はいはい〜♪」ってなもんである。当然、奥さんたちもほとんどが私より年上なのだが、女同士の付き合いには私は有無を言わさず「オンニ」と呼ばせてもらってる。女同士の付き合いまでオットの上下関係に従って私の方が上になる、そんな家族づきあいは窮屈以外の何でもない。という訳で私の回りの女性は必然的に年下より圧倒的に年上の女性、「オンニ」が多い。これは、結構いいかんじ。何だか可愛がってもらってる気がする。
話はそれたが、レストランをオープンした奥さんは、私の大好きなオンニのうちの一人である。何となく男っぽいというか、ざっくばらんな所が私と通じるような気がする。オンニもその感覚は同じようで、私の事を実の妹みたいだと言ってくれる。性格は似ているような気がするけれど、決定的に違うのが、彼女は料理上手、家事上手。見るからに手早く何でもやってのける、という感じの女性だ。そしてそういう、何でも完璧にこなしそうな女性というのは私の回りにも何人かいるが、何となく私は苦手である。何故かというと、そういう女性たちは「私はなんでもちゃんとしてるのよ。文句ある?」みたいなオーラを発していて、近寄りがたい。でもそのオンニはそれがない。そこが大好きなのだ。気さくで、さりげなく回りに気を遣い、そしてそれがちっともイヤミじゃない。うちのオットにも「彼女を見習え〜。」とよく言われる。ツマと他の女性とを比べるなんて、普通だったら「何ぃ〜??」とその場でけんかが始まる所だが、私も素直に「ホント、あのオンニみたいに出来ればね〜。」なんて、しんみりうなづいてしまうのである。
そんなオンニとますますお互いをわかりあえる機会が、先日あった。私たち夫婦と、オンニ達夫婦と、お酒を飲んでた席での事。お酒も入ってみんなほろ酔いになった頃。突然、オットが愚痴モードに入った。「Tオンマ、(オットはオンニの事をこう呼ぶ。)オモシロイ話してあげようか。うちのやつはね、泥のこびりついた靴下やらTシャツやら、子供の下着やら、何から何までいっしょくたに洗濯機にぶち込んで洗うんだよ。信じられる?ホント、怠け者でしょう?うひひ〜。ぐびぐび。」私は内心、オンニはきっと色物、白いTシャツ、ちゃんと分けて洗濯機をまわすんだろうなぁ、いや、一つ一つ「たらい」かなんかで、手洗いしてるのかもなぁ、なんてトローンとした頭で考えつつ、反論体勢に入った。もちろん、開き直る。私の得意とするワザだ。「別にいいじゃん。毎日忙しくて、そんなの分けて何回も洗濯機まわす時間なんてないのよ〜ん。」オットはなおも絡んでくる。ここぞとばかりに日頃の鬱憤を晴らしてやりたいという欲望がふつふつと沸いて来たようにもみえる。

「大体さ、君はだらしないんだよね。部屋はめちゃくちゃ、整理整頓どころの騒ぎじゃないし、何でも適当、そう。全てが適当なんだよ。ぐびっ。」「そう。私は適当なのが好きなのよ。大体、洗濯ぐらいでぐだぐだ言うな〜。靴下に付いてるのは『泥』でしょ?毒じゃないんだから、一緒に洗っても死にゃしないんだからさぁ。適当に力を抜いて、楽に生きようよ〜♪」「俺が言ってるのはそういう事じゃなくてさ、そもそも靴下とか、下着って言うのは手で洗うもんじゃないの?俺は昔からオモニムがそうやって、手で洗ってるの見て育ったからな。」「昔は洗濯機がなかったからそりゃ、靴下じゃなくたって、手で洗ったでしょう。洗濯機があるのに、なんで手で洗わなきゃいけないの??」「泥のこびりついた靴下と一緒に洗ったTシャツなんか着るの、俺やだな。」「ひひひ、嫌っつったって、今まで8年間あなたが着てたTシャツは、そうやって洗ったやつだよ。いまさら言われたってねぇ。」

こうして他愛もない言い合いが始まろうとしたその時、オンニが口をはさんだ。「ちょっと、ちょっと!」みんなの目がオンニに集まる。きっと気の利いた言葉で場を収めようとしてるんだろう。みんなそれとなくそれを待ってたんだし。オンニは「J氏!」とオットをみつめた。オットはニコニコしながら、「うんうん。Tオンマ、言いたい事があったら言って言って。どんどん言って。」

ところが、オンニの口から出た言葉は「洗濯機でいっぺんに洗うのが、何がいけないの?」「へ?」みんなの目が点になったのを尻目にオンニは一気に言った。「私はね、洗濯は全部いっぺんに終えるわね。いっそがしくてしょうがないのに、そんなの分けろっていう方が無理よ、J氏。私はパンツも一緒に洗うわよ。泥の付いた靴下もパンツもTシャツも、全部一緒!それでいいのよ。」ひひひ、勝った。オットは眼を真ん丸にして、言葉を失っている。そんな言葉がツマの口ではなく、日頃信じきっていたオンニの口から出るとは信じられなくて、耳を疑ってるのだろう。当然だ。私も耳を疑った。まさか、オンニの口からそんな言葉が出るとは思わなかったな。オンニの話はこれで終わらなかった。「それからね、いい事教えてあげようか。洗濯した後、干しておいてもなかなか乾かない事あるでしょ?」
「あるある〜。」そう、サイパンは年中、湿気が多いので、午前中の陽が射す時間か、風通しの良い場所を選んで干さないと乾かない。それに加えて突然降り出すスコールが多いので、家を留守にする時は屋根のないところでは干せない。私の場合は。というのは、こっちでは洗濯物が雨に濡れても、へいっちゃら、という人もざらだ。雨に降られても、そのまま干しておく。また乾くまで干しておくのだ。そうやって、何日も干しておくと、洗濯したんだか何だかさっぱりわからなくなる。何日間の湿気を含んで、洗ったばかりのTシャツからすえたような臭いがする事もある。だからこっちでは、みんな洗濯機から出した物は乾燥機に直行、という事が多い。うちには乾燥機はないが、屋根付き、風が通り抜ける絶好の場所があるので、そこに干してる。

私はオンニに聞き返した。「なかなか乾かない時、何かいい方法でもあるの?」オンニはすごい秘密を打ち明けるように、嬉しそうに言った。「電子レンジに入れてね、1分間まわすの。よく聞くのよ、りょう子。1分よ、1分。チーンって鳴ってレンジを開けるとね、シュワーってすごい蒸気が出てね〜、もう、パリパリで気持ちいいわよ〜。」「で、電子レンジ〜??」私は吹き出した。オンニは大真面目になおも言った。「そう、電子レンジ。あっという間に乾くし、私なんか忙しい時にはTシャツ入れ替えながら、電子レンジ回しっぱなしよ。あとね、子供が履く運動靴とかね、なかなか乾かないじゃない?電子レンジにいれるといいわよ〜。」「う、うんどうぐつを〜!!電子レンジに〜?」うひゃひゃひゃ。私は笑いが止まらなかった。向こうの席に座ってたアジョシが、ワタシの笑い声のあまりのうるささに振り返ったほどだ。

全てが適当でだらしない私でも、そこまではしなかった。それはいくらなんでもちょっとなぁ。

笑いすぎて出てきた涙を拭きつつ、「オンニ、それ、ホントなの?私の味方になってくれようとして、わざと言ってんじゃないの?それともウケを狙ってるとか?」「ホントだって〜。騙されたと思って、試してみなさい。」「でも怖いなあ。Tシャツ燃えちゃったりしないのかな。」「大丈夫。だから言ったでしょ?1分だけ回して様子を見ながらまた回せばいいのよ。シュワーって蒸気が出てね〜、オモシロイぐらいにパリパリに乾くんだから〜。ふふふ。」女同士でゲラゲラ笑ってると、オンニのだんなさんが「おい、調子に乗らないで、もうそのぐらいにしておきなさい。」とポツリと言って、大真面目な顔でうちのオットと焼酎の盃をカチンと合わせた。私とオンニはそれがおかしくて、また大笑いした。
何でも完璧にこなしつつ、こういう事を平気で暴露しちゃうところが、オンニの好きなところなんだよなぁ、なんて妙に納得したのだった。味方を得て調子に乗った私は翌日、他のオンニに聞いてみたところ、そのオンニは衣類のほとんどを手洗いしてるそうだ。その日着た物はウール用洗剤でチョコチョコッともみ洗いし、干しておくそうだ。そうしないと生地が傷むし、何よりも「手で洗わないと洗った気がしない」そうだ。う〜む、洗濯も人によって全く違う。奥が深いではないか。

たかが洗濯、着れれば何でもいいじゃん〜、と私は思うのだが、みなさんはいかがだろうか。そんなだらしない人は初めてです、というようなメールが来ませんように〜♪

Kライター:りょう子

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 Vol.1 はじめに  Vol.2 日本人みたいな韓国人
 Vol.3 凧  Vol.4 美容院のアジュンマ
 Vol.5 サイパンで息づく韓国の食文化  Vol.6-1 交通違反-前編
 Vol.6-2 交通違反-後編  Vol.7 クモンカゲ(穴ぐらのような店)
 Vol.8 サイパンのランドリー事情  Vol.9 サイパンの韓国人社会でブームの「ノニ」





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