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さて、交通違反でマウンテンバイクにまたがったおまわりさんに追いつめられた私。免許証と車検証を見せろという。それらを取り出しながら、作戦を実行に移すべく、まずはあれこれ言い訳してみる。おまわりさんは穏やかな笑みを浮かべながら、ペナルティ・チケットに何やら書き込んでいる。無線ラジオで何やら連絡を取ったかと思うと、彼の相棒らしきおまわりさんがこれまたマウンテンバイクで汗だくでやってきた。穏やかに微笑んではいるけれど、二人の警官に囲まれて私はちょっとひるんだ。が、ここで黙る訳にはいかない。「今度から気をつけ・・ます。シートベルトを締めてなかった事にしてね。」「何ならこれから家に戻ってチャイルドシートを積んでくるけど・・・。彼は書き込みながらも、「これから本当に気をつけてくれよ。」「チャイルドシートはどんな事があっても車から外してはだめだよ、わかってるだろ?」などと答える。そして相棒と何やらヒソヒソ話す。「サイパンでの生活は長いのかい?」「日本で生まれたなら日本語も出来るんだな、うらやましいな。」「ダンナは韓国人かい?」と世間話までした。何となくうまく行った気がした。私のしつこさにポリスAも辟易してるようだったし−それが私の作戦でもあったのだが(笑)−、相棒とも「面倒だからさっさと終えちまおうぜ〜。」と言ってるように見えた。私は「わかってます、これからは本当に気をつけます。ありがとう。それに手間をかけてしまってごめんなさい。それにしても友達はどこで食事してるのかなぁ・・・。」などと話しながら場もなごみ(?)万事うまくいったと思いかけた時、彼が書き込んだチケットを差し出した。私がサインすれば手続きは終了だ。サインをしようと違反項目の欄を確認すると、何やら5桁のナンバーが二つ書かれている。二つ・・・?
「あの・・・ナンバーがどうして二つもあるの?」と聞くと、待ってましたとばかりに突然ポリス・オフィサーの顔に戻って、暗唱してきたかのようにこう言った。「ナンバー○○○○は歩行者に対する安全確認を怠った、ナンバー××××はチャイルドシートを積んでなかったというペナルティ。僕もこんな事はしたくないんだけど、法律で決まってるからしょうがないんです。これからは安全運転をこころがけてください。こちらにサインを。」
!????ガーン、私のもくろみは見事に外れた。しかも項目には全て書き込んであって「時すでに遅し。」はぁぁ、私の必死の努力も虚しく・・・。それにしてもだめならだめと先に言えばいいではないか、人を期待させるような態度を見せておいて、ちゃっかり二つも書き込んじゃってさ〜・・・、とブツブツ言ってみる。彼はサインを急かす。私がサインしないと言ったら?と聞くと、Court(法廷、裁判所)で会う事になるという。そんな面倒な事はしたくないと思う反面、歩行者不注意というのは納得がいかなかったし好奇心も手伝い、サイン出来ないってゴネてみようかなぁという気持ちも頭をよぎった。こちらは裁判なんてザラなのだ。それにしたって、チケットにはコピーもとってあるし、もう「なかった事」には出来ない。さすがの私もあきらめてサインした。はぁぁ、ついてないなぁ。
とその時、警官とは反対側に車が一台停まる。見覚えのある車・・・そうだ!ダンナと待ち合わせてた事をすっかり忘れてた。今まで正面駐車場で待って、遅いので裏口に来たらしい。ああ、もうちょっと早く来てくれれば、せめてサインをする前に・・・。二人の警官に囲まれてる妻を見て彼は何というだろうか?「またスピードか〜?それとも一時停止しなかった?」・・・まぁそんなところだろう。悔しくて、事のなりゆきを早く話したくてウズウズしてる私を尻目に彼は・・・。
車から降りた彼は、私の方は見向きもせず、警官に近づいてゆく。唖然として、前方を横切る彼をみつめる。ホテルの薄暗い裏口で静寂を破るようにして彼が最初に発した言葉は、「Hey、
Men〜!」ほうけたように彼をなおもみつめていると、あとから来た相棒の方が懐かしそうに「ヘイ〜!元気だったかい?」と握手してる。「君の奥さんかい?」とキマリ悪そうに確認したあと、「いや、実はさ〜、」と事の成り行きを説明し始まる。ん?知り合いか??ここまで来るとゲームみたいになってきた。ついついニヤついてしまう。どっちが勝つか・・・。最後までふむふむと話を聞いてたダンナは、OK・・・・僕とちょっと話をしないか?と二人を私から離れた所に呼び寄せる。耳をダンボにして聞いてやろうかと思ったが、さすがの私もちょっと面倒になり、窓を閉めて音楽をかけ、子供たちと遊んだ。 |
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ふと外を見ると、話しおわった警官二人がバイクにまたがり、道路に出ようとしているところだった。私にもバイ〜!と手をあげ、にこやかに挨拶までしていく。一体三人の間でどんな話がなされたのか?主人の話を要約すると、こうだ。
ダンナと挨拶を交わした警官は、彼が高校生の時からの知り合いだと言う。というのは、サイパンの高校で選抜されたローカルの学生を引き連れて韓国へ研修に行くという、韓国人コミュニティのプログラムがあるのだが、当時韓国人会の役員をしていた主人は、その高校生達を引率していたのだ。サイパンで生まれ育った高校生が韓国へ行く、それも一日中、サイパンでは体験する事のない人込み、地下鉄、バスを乗り継ぎながら観光名所やテレビ局などを見て回り、一流まではいかなくてもホテルにみなで泊まるのだから、楽しくない訳がない。宿泊していたホテルでもはしゃぎまくってたのをこっぴどく叱ったのが他でもないうちのダンナ、学生の中でもとりわけはしゃいで、お酒を買いにこっそりホテルを抜け出そうとしてダンナに見つかったのが、例の警官だったという訳。何という不思議でステキな因縁!そう、私たちにしてみればこれ以上のステキな縁はない、警官にとってはどうか知らないが。
結果からいうと、この件は「なかった事」になった。翌日の夕方4時にダンナはガラパン地区の交番に呼ばれた。私と子供たちはハイアットのプールでのんびりしながら、行ってらっしゃい〜!とダンナを交番に送り出した。30分後にプールに戻ってきた彼の手には、昨日没収された私の愛しい免許証が握られていた。チケットは破り捨てられたらしい。「奥さんに、僕たちの事、もうちょっと尊敬するように伝えてくれよ〜。」の言葉と共に・・・。
それにしても、こんな「悪い事」を翌日、交番に呼び出して処理するというのも、サイパンらしくて笑っちゃうのだが、警察がそんなんでどうする!とあきれる反面、ちょっと情けないサイパンのおまわりさんにこの上なく親近感が湧き、風を切って走る彼らを見ると頑張れ〜と応援したくなるのだ。 |
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